電撃大賞

その名前を聞くと、作家志望でなくても、特別な気持ちになる人もいることでしょう。「電撃」というのは、株式会社KADOKAWAによる、若者向け小説・コミック・イラスト等のブランドで、「電撃大賞」はその新人賞です。今回で二十三回目を迎えるそうで、第一回(その頃は「電撃ゲーム3大賞」という名称だった)大賞受賞の土門弘幸の処女作「五霊闘士オーキ伝」を古本屋で偶然読んで衝撃を受けたのが懐かしいです。十二~十三年前ぐらいかな。その古本屋はもうないけど。

ちなみに一番最後に読んだ一番新しいライトノベルは今から十七年前に出版された上遠野浩平の「ブギーポップ・リターンズ VSイマジネーター Part1」で、それ以降に出版されたライトノベルは立ち読みさえしていません。なぜせめてPart2を読まなかったのか? それはあまりにも「Part1」が色んな意味で恐ろしく、とてもPart2を手に取ることなどできなかったのです。
「Part1」はそんな凶器のような作品ですが、でも私はこの「Part1」を読んだことない人におすすめしたいです。ライトノベルには挿絵がつきものですし、実際緒方剛志の素敵な挿絵がついていますが、この作品はきっと挿絵がなくても面白いはずです。挿絵がないとただ文字が並んでいるだけになるわけですが、それでも間違いなく面白いです。もともと小説がそうであるようにね。

KADOKAWA、電撃大賞でWEB応募始めるってよ

さて本題ですが、この度電撃大賞の小説部門で、「WEB応募」が開始されました。

電撃大賞といえば今まで紙に印刷して紐で綴じられたものしか受け付けないことで私の中で有名でしたが、ここに来て「応募方法の追加、しかもネットで」というかなりナウいことに手を出したわけです。
なぜ「WEB応募」なんてものを開始したんだろう……と思ってまず初めに考えたのが、「応募受付担当が全国から集まった紙の束を面白がって積んでたら本社の床が抜けたのでペーパーレスの機運が高まった」という理由です。では実際に全国のワナビたちの怨念で本社の床をぶち抜くことができるのか計算してみましょう。少なく見積もった重さは次の通り。

1作品110枚くらい×応募数5000くらい×A4一枚の重さ4gくらい≒2200000g≒2.2t

本社の床がオリハルコンとかでなければ、もしかすると……もしかするかもしれません。

電撃大賞小説部門の応募数の推移

床でないとしたら、なぜWEB応募を始めたのか?
もしかして応募数が減っていて、増加を狙って始めたのでは? とも思ったので、現在までの応募数の推移を調べてみました。
本当に興味本位の調べ物なので、ラノベの明日をうらなってみたいとかそういうことではありません。ただとか思っていただければ幸いです。

応募数推移に関しては、WikiPediaに載ってたので引用します。
まずは表。Office Onlineで作ってWordPressのエディターにコピペしようと思ったんだけどなぜかできなかったので画像貼ります。ごめんなさい。)

電撃小説大賞の総応募数推移(表)
長編・短編の空白セルはデータがなかったので

表内に書き忘れましたが、長編短編の応募総数 64621 です。25トンぐらいじゃないかな。
そしてグラフがこちら。
困るほどではないですが横に大きいです。横に大きいので当然縦にも大きいです。ごめんなさい。

電撃小説大賞の総応募数推移(グラフ)
第21回で何があったのか…

ここ最近、二回連続で応募数が下がっているというのは個人的には驚きです。どうしたの。
もし15回からのうなぎのぼりが起こってなかったとして、そのまま漸増してたとしたら、22回の応募数あたりに到達してる気もしますね。もしかしたら爆上げしてた魔法が切れて、本来あるべき総数に落ち着いたのかも。
ということは、次回は5000~5200程度に微増するのかも。と大胆予想。

20回まで応募数がほぼ上がり続けた要因

微減したりもしたけれど、私はげんきです。といったところで、基本的には2013年(第20回)まで右肩上がりです。まあ
1:近年に至るまでメディアミックスによるライトノベルの存在感が漸増
2: 2008年にメデェアワークスがアスキーを吸収合併して告知できる媒体が増加
3:メディアワークス賞等が創設されて枠が広がった
といったところかなぁと思います。確証は全くありません。

私が特にへーと思ったところ

いくつか挙げます。

第16回での短編の妙な増加

長編は前回を踏襲した上げ幅ですが、短編だけなぜか400ぐらいぐいっと底上げされてます。結果、総応募数は最大の上げ幅になってますね。
これは多分「電撃文庫MAGAZINE賞」の創設が関連してんのかな、という気がします。
創設は第15回ですが、受賞作が掲載されて存在感が出てきた後の第16回、と考えればいいのかな。それで他の公募に気を取られていた短編ワナビさん達がムラッときて電撃の方を向いたんだと思います。

2013年(第20回)で賞金が最大100万円→300万円に増えたのに応募者があまり増えていない

講談社に負けじと200万積んで、たったの500です。
(正確には他の賞の賞金も増加してるのでもっと積んでますが)
「色々リサーチした結果、応募数が減少するのは必至だった。でも200万くらい積んだら減るどころか増加にまで繋がった!」ということなのか、「ほとんどの人にシカトされたので意味なかった」のかはわかりません。
というか、短編に至っては減ってます。おいおい角川さん、金じゃあねえんだよ! とワナビさんたちが啖呵を切ってるのが目に浮かびます。カッコイイ!

2014年(第21回)、2015年(第22回)の減少

賞金を積んで間もないその翌年・2014年(第21回)にきて初の大幅減少です。その減数なんと1500。長編が1000、短編が500くらい。
その次の2015年(第22回)でも減少は歯止めがかからず。併せてピーク時から2000も減り、3割が吹っ飛んでしまいました。

この3割、どこにいっちゃったんでしょう。なんでこんなことになっちゃったの。

応募数減少の理由を(本当にどうでもいいと思うけど)考察してみる

ここから先は特に、個人の価値観に大きくる主張がじゃんじゃん出てきます。
なので的外れもいいところだ、と思えるような記述もあるかもしれませんが、そういう場合は、まあお前の中ではそうなんだろうな、という感じでお読みください。

あと検索して調べてると「アスキー・メディアワークスの誰かが何かをステマしたのがバレて応募者離れを起こした……」と断定している2ちゃんねるでの書き込みやYahoo! 知恵袋も見つけまして、IPなどの証拠もあるということなのですが、それが仮に正しかったとしても一気に1500もの応募が減るというのはちょっとありえない気がするし、個人的には「応募したくなくなった人も何十人かはいたかも」というレベルだと思っています。興味がある方は検索でどうぞ。

もう一つ、他の新人賞公募の応募数推移も参考にしたかったのですが、増減を見るのに意味があるほど応募数が多いものが見当たらず、応募数が多そうなの(スニーカー文庫とか)は応募数が公表されていないっぽく、結局使えそうなデータがなかったので比較とかできません。すみません。

さて、私が考える応募数減少の主な理由としては、以下の通りです。

1.小説家になりたい人が「小説家になろう」への投稿で承認欲求を満たすようになった
2.最近の受賞者があまり有名になっていない

1.みんなが「小説家になろう」で承認欲求を満たし始めた

小説家になろうというのは、その名前の通り、小説家になれる小説投稿サイトです。
もちろんここでいう小説家というのは小説を書く人、ぐらいの意味で、投稿すれば商業デビューできますよ、ということではないわけですが、SNSの要素があるので小説に興味のある人がたくさん常駐していて、実際にたくさんの人に読んでもらえるような仕組みになっています。読んでもらえるなら毎日でも、というアグレッシブな人もおり、新聞の連載小説に負けない頻度で投稿している人もいます。が、そういった活動を経て上達している人とちっとも上達しない人がおり、やはり才能ってあるんだよなぁと思わずにはいられません。マイケル・ジョーダンの名言「間違った技術で練習を続けていたとしたら、間違った技術でシュートする名人になるだけ」というのを想起してしまいます。ごめん。

基本的に誰でも何でも投稿できる(=承認欲求を満たせる)のと引き換えに、作品の質は全体的に低いです。
総合アクセスランキングがあり、そういうのに載るような作品は(なろうのメインストリームのジャンルである「異世界転生」「チート」「無双」などの独特の要素が折り込まれていないと難しいようなのですが)、まあ私の好みは別として、好きな人はまあまあ入れ込んで読めるのかな、という感じがありますが、大半は質が低いです。どう質が低いのかは、それを伝えられるだけ読んでいないので表現するのが難しいです。お手数ですが、投稿作品を実際に眺めてみてください。
ただフォローではないですが、そうは言っても新着作品をなんとなく読んでしまったりするのは、作品の質は低くても、アイデアに関しては面白いものがあったりするからなんですよね。それだけに読んでいてもったいない感もあったりします。

そして小説家になろうのもう一つの機能として、スカウト待ちというのがあります。つまり、なろうで作品を公開していれば、どこかの出版社の誰かが声をかけてくれるんじゃないか、という期待を持っている人たちもいるわけです。これは叶わぬ片思いとは言い切れない部分があり、実際デビューする人たちもけっこういるようですし、実は電撃文庫も「魔法科高校の劣等生」という作品をスカウトしたっぽいです。もっともスカウトされる人間は少しだけで、あとはスカウトを待つということになるのでしょう。でもそれに気づかれないようになろうさんも「こんだけデビューしてんねんで、キミなら書いてればいつかどこかから来るかもやで」と猛アピールしてます。いやあ、これなら私もデビューするだけならできるんじゃないかなぁ! 面白いかどうかもわからないタイトル一覧と、出版元の社名一覧を見るとそう思わずにはいられません。まあ可能性があるというのはいいことですよ。可能性を見出そうとしている時点で、何もしないよりはグッドだと思います。

ま、全部自分を棚に上げて言っちゃてるんですけどね。今現在、特に作品をどこにも公開していない私よりかは何倍もマシです。

さてまとめると、なろうによって以下のような変化がワナビさんたちに起こり、結果電撃大賞の応募数に悪影響をもたらしたのではないか? ということです。

昔のワナビさん:
「電撃大賞」とかの公募に応募して、特別賞とかでもいいからとにかく受賞して、それからもっと頑張って、小説家になってみんなに読んでもらいたいと思います! 伝えたいことがあるんです! よろしくお願いします!

今のワナビさん:
なんだぁ「なろう」なら下手な底辺作家よりも読んでもらえるし、感想までもらえるし、SNSっぽくて楽しいし、そのうち出版の声もかかるかもしれねーし、マジに小説家になれるかもしれないじゃん!俺スゲー!

2.最近の受賞者の活躍がめざましくない

めざましくない。と書いたの初めてです。こういう使い方あるんだろうか?

作家というのは誰しも自分の作品には大なり小なり自信はあるはずで、「俺の小説が受賞できないのはよく考えたらあの選考委員が悪い。何ていうか、アイツ多分読めてないんだよなぁ。作家のくせに」とか本気で思っているような人として破綻してる鼻持ちならないプライドを持った曲者共ばかりです。作家には謙虚さが大事、編集者さんの言うことをちゃんと聞いて立派な作家になるのよ……などと言われますが、そんなことができれば就職してます。いいですか、そんな謙虚なストーリーテラーなんていません。幻想です。いざとなったら非常手段だって厭いません。受賞できるっていうんなら人の二、三人ぐらい平気で殺しますよ。あ、小説の中でですよ。

でも自分の作品がどんなに名著であろうと、売りだしてもらえないと話にならないわけです。
そこで最近の受賞者と受賞作のリストを眺めてみるわけですが、なんだかほとんど見覚えがありません。大賞受賞作「ひとつ海のパラスアテナ」の表紙のビジュアルと「鳩見すた」という名前だけは妙なインパクトがあり覚えてますが、それ以外はさっぱり覚えてません。

そんなに読者が欲しいなら自分で開拓せえ、ご近所さんやらツイッターやらフェイスブックやら自分で営業してまわらんかい……というのはもちろんその通りだと思うんですが、やっぱり個の力には限界はあると思うし、周りから不自然なくらい持ち上げてもらうことによって眠れる力を遺憾なく発揮する、ほめて伸びるタイプの新人作家もいると思うんですよね。ここはこう、やっぱりただ本の刊行を確約してもらえるだけじゃなくて、著名な新聞の一面をドカーンとジャックして広告打つとかさ。都会のことはよく知らないけどスクランブル交差点のスゲーでかい看板に広告出すとか、電車とか飛行機とかKADOKAWAの本社の壁とかに超でかい挿絵のキャラクターを描いちゃうとか、渋谷駅とかで数人のサクラを用意して受賞作を読んでもらって「(作品名)は泣ける!」とか「(作品名)はヤバい!」とか「(作品名)みたいな作品を今まで一度も読んだことがなかった!」とか大きくひとりごと言ってもらうとか。

要するに何を言いたいのかというと、「電撃大賞はクオリティ高いですよ、それがポイントですよ、応募してね」、というだけでは、応募を集めるのは難しい時代なんだろうなぁ、ということです。

あ、別に応募数を増やす施策をしないとヤバいぞと主張したいわけではないです。ただ応募数も減り、受賞者も大して目立ってなく、受賞作はいい作品のはずなのにあまりヒットしているとはいえない……という状況になった時に、じゃあ電撃大賞からデビューしてどういうアドバンテージがあるの? と言われて、「応募作は(余程酷くなければ)基本通読してもらえます」とか言っても反論になってない、という点が問題かなぁと。いやそれはそれで反論になってるか。

なんだかとりとめのない内容になってしまったので、話を元に戻します。

で最初の話に戻るんですが、なぜWEB応募を始めたのか

そういえばWEB応募を始めた理由について考察してたんだった。
まあそんなこんなで応募者数が減るのはもうリサーチで織込済みだったけど、第21回でのガタ落ち具合が想定外で笑えないレベルだったので、この時点でぼちぼちとWEB応募を検討し始め、第23回で実現に至った、くらいの感じじゃないかなと思います。あんまり減った減ったと言われるのも腹立つのでテキトーにテコ入れしてみるか、という。

(でもこういうのって冷やかしが減ってるだけで競争率変わんないんだよなぁ)(まあいいじゃん)

最後に本当にどうでもいいグラフ

Googleトレンドでの検索数の推移。
まあ「なろう」が勢いが増してるんだなぁということだけはわかりますね。一方電撃文庫は減ってますが、これは相対的に減ってるというだけで、電撃文庫だけの推移を見ると漸減しながらも横這いになってるのがわかります。あとなろうは基本ネット上のものなので、サイト名で検索されて当たり前、という背景もあります。
なんとなくコードを取得したので貼っただけです。それでは。

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