前編・調査結果編を読んでない方はこちらから。

というわけで、電撃小説大賞の都道府県別受賞者数のデータ、いかがでしたでしょうか。
おさらいすると、以下の道及び県、および国外からは未だ受賞者が出てません。

北海道 青森県 岩手県 宮城県 秋田県 群馬県 富山県 福井県 山梨県 岐阜県 和歌山県 島根県 岡山県 山口県 徳島県 香川県 高知県 佐賀県 長崎県 宮崎県 沖縄県

つまり以上の場所に住んでいるあなたはラッキーです。
県下(北海道は道下って言うのだろうか)初の電撃作家になってくださいね!

なぜ私の住む県に受賞者がいるかいないかを調べたのか

なぜ自分が県下初の受賞者になる可能性があるかないか、あらかじめ知っておく必要があったのか。
理由はひとつ、大変なことになるからです。
初の受賞者、しかも九州という僻地において、ということなのです。もう県レベルでの大騒ぎになるに違いありません。心の準備をしておかないといけません。具体的にはこんな感じ。

1.県庁とか市役所とかに「○○さん電撃大賞受賞!」とかいう垂れ幕がかかる

とりあえず「県民が全国区の文芸賞の公募でトップを獲った」「受賞作が刊行され全国の書店に並ぶ」なんて情報をキャッチするなり、もう地域の皆さんは一大事だという認識になるはずです。一大事なので、祝わなければいけません。
こういう時田舎では何が起こるかというと、とりあえずてんやわんやし、そのうち垂れ幕を作成しようという機運が高まります。役所の壁に掛けられているアレです。「祝・県立○○高校 全国大会出場」とか、「祝・○○○関 秋場所にて幕内昇進」とか、「祝・市立○○中学校 合唱コンクール県大会出場」といった塩梅で、県民の活躍を称え県下に広く知らしめよう、という性質のものですね。

あなたの場合凄いのは、もう「幕内」とか「出場」などという段階ではなく、既に全国区のコンペティションで大賞受賞、即ちチャンピオンになっちゃってるということです。田舎者が都会人を差し置いてチャンピオンになることなどまずないので、県下の文化団体の皆さんは親の仇を取ったように舞い上がることでしょう。結果、他の垂れ幕より明らかに目立つそれが数か月にわたり役所の表面おもてづらに掲げ続けられることになります。

祝!ライトノベル作家 ○○○○氏 電撃小説大賞【大賞】受賞!
デビュー作「○○○○○○○○○○○○○」全国有名書店で発売

いくら既に公表されている事実とはいえ、改めてこんな垂れ幕提げられては恥ずかしいでしょうね。
恥ずかしがり屋のワナビさんはもうこの時点で故郷くにから出て行けと言われているような気分になることでしょう。
売れ行きが良く重版しようものなら「重版決定!」とかいう垂れ幕も出てくるかもしれません。田舎をなめてはいけません。

2.県庁とか市役所とかに表敬訪問しに行かないといけなくなる

そんな仕打ちを受けて深く傷ついたあなたですが、さらに追い打ちをかけるように「表敬訪問に来い」などと言われることになります。
表敬訪問の様子は広報誌に掲載され、全世帯に無料で配布されます。電撃大賞は都内で授賞式があるのでその時点で面が割れてしまうわけですが、今度はテメーのツラとペンネームを地域の皆さんに拝んでもらいな、ということになります。もう腹をくくるしかないですね。恥ずかしがり屋のワナビさんは腹をくくるはずが首をくくらないように注意してね。

芥川賞とか直木賞とかはもちろん、ライトノベルでそんなのあるか? と思われるかもしれませんが、最近のお役所はけっこう軟派なこともしたりするので油断できません。今は昔、上遠野浩平が「ポップカルチャーには権威とかが存在しない気がする」的なことを書いてた気がしますが、今や電撃大賞は大権威と言って過言ではありません。

それにしてもまあ、わざわざお偉いさんに役所まで会いに行かないといけないというこの面倒さですよ。あなたも私も心底行きたくないと思うかたわら、周囲の人間の「作家さんとはいえ(笑)、表敬訪問を断るって社会人としてどうなの」的な目が何となく怖く、結果しぶしぶ行くことになるんでしょうが、きっとギャランティー的なものは一銭も入ってこないし、そもそも県知事とか市長とか敬ってもいない上に表敬訪問ですよ。不思議じゃね?
「普段あまり近づかない役所の中をうろつける」「中の食堂を堂々と利用して堂々とメシを撮ってなんとかグラムにアップロードする」くらいはできるかもしれませんが、それ以外のメリットは何もありません。

3.ローカルなケーブルテレビ局とか新聞社とか出版社とかがあなたを取材しに来る

基本的にローカルメディアはネタに飢えています。
あまりに飢えすぎて、例えば田舎のローカルなケーブルテレビ局なんかはキー局のお散歩番組の真似をしてあまりに地元民のノリが悪く自爆するくらいにネタに飢えています。
そんな干上がったダムのような環境に、あなたという恵みの雨雲が颯爽と登場したりなんかしたら、まさに水門全開といった勢いで取材責めですよ。

これも面倒っちゃ面倒ですが、ライトノベル書きとしては若干のメリットというか、まあまあ貴重な体験になりますね。テレビと新聞とその他の出版社とかではインタビューの内容が割と違うなとか、インタビュアーってこういう感じなんだなとかいう発見があるでしょう。もしかしたら田舎のメディアらしく写真撮影の際に「キメ顔でガッツポーズしてください!」とかいうリクエストがあるかもしれませんね。練習しとかなくっちゃね

そもそも(これは地域に関係なくですが)取材を立て続けに受けることなんて人生の中でほとんどありえないわけで、何度も何度も同じインタビューに同じ答えをしたり、最終的には「もう取材は飽きた」「これだからメディアは嫌だ」とかいう意識の高い感想を身内に漏らすことができるわけです。
あなたのお母様や同居人さんはマネージャーの仕事をしないといけなくなりますね。いい思い出になるでしょう。

4.地元の若者に希望と現実を突きつけることができる

田舎に住んでいると、ただそれだけで、ライトノベル書きみたいな特殊な存在になるのを諦めざるをえないような、そんな雰囲気があります。
やっぱり関東なら東京、関西なら大阪だよなぁ、人は生まれを選べない、うらやましいよなぁと。
周囲の理解がないので精神的に孤立します。

そこであなたが最初の開拓者となれば、あなたは若きワナビさんたちの希望になれることでしょう。
そして同時に、揺るぎない現実を突きつけることにもなるでしょう。「現実に地域間格差はあるだろうが、それでも俺は賞を獲った。田舎に住んでいることは言い訳にならない」と。

ともかく、住んでいるのが陸の孤島だろうと、五島列島だろうと、屋久島だろうと西表島だろうと甑島だろうと、なれるものはなれるはずです。
インターネットのご時世とはいえ制作関係者とはリアルで顔を突き合わせる必要はあるので、ずっと離島に根を張っているというのは限界があるかもしれず、結果として上京するという選択をせざるを得ないのかもしれません。でも、少なくとも受賞するまでなら自分の現在の生活圏で可能なはずです。
自分の居住地も明かさない私が言ってもあまり説得力ないかもしれませんが、九州、とりわけ福岡より南に住んでいる人で、何としてでも賞を獲りたい、という人は、そう信じて邁進することが大事なんだと思うのです。私含め。

学生の皆さんはすてきな夏休みをお過ごしください

特に学生さんは、月曜日の海の日から本格的な夏休みモード、という人もいるかもしれません。
そんな貴重な季節を執筆活動に余すことなく利用しようなんて考えてる、田舎者の皆さんが報われますように。
もちろん、既に学生でなくなってしまった、より残念な皆さんも同じく報われますように。

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