Google Chromeには、オフライン時にだけ遊べる恐竜ゲームが搭載されています。

オフライン時にだけ! と書けばなんとなくプレミアム感があって目を引くせいか皆そう書いていますが、実際にはアドレスバーに「chrome://dino」と打ち込んでアクセスすれば遊べます。いわゆるイースターエッグというやつですね。

恐竜が出てきたら、スペースキーを押してスタート(音が出るので注意)。荒野を左から右に爆走しながらサボテンをジャンプでよけ続けるという、無目的感極まるゲームです。ハイスコアはありますが……

サイバーな現代社会もネット接続がなければ恐竜時代レベル。そんな皮肉が込められているのかもしれないこの恐竜ぴょんぴょんゲームですが、かの新生ブラウザーである「Vivaldi」でもプレイ可能です。

しかしその内容にいろいろ思うところがあるので、ちょっと一発、ここらで全世界に主張しておこうと思います。

Google Chromeにおけるこのゲームの見どころ

Vivaldiのそれを紹介する前に、まずGoogle Chromeではどうなっているかをおさらい。

紹介記事なんか「Chrome 恐竜」で検索すればこれでもかというぐらいにあるので別に私が紹介しなくてもいいわけですが、本題のイントロダクションとして書きます。

ジャンプしてサボテンを飛び越える

スペースキーを押すとジャンプして、サボテンを避けることができます。
ちょんと押せばちょんと跳び、押し込めば脚力の限り大きく跳びます。

高いサボテンは力強く飛び越さないといけないわけですが、大きく跳び過ぎると、飛び越えた先にある次のサボテンの上に着地してしまいます。サボテンを飛び越えながらサボテンの位置を把握する、いわばサボテンフルな状況にひたすら耐えなければいけません。

ジャンピングダイナソー
ジャンピングダイナソー

――俺、いつまで荒野を左から右に爆走してるんだろう?
そんな葛藤は彼の表情からは一切読み取れません。しかしそれもまた当然かもしれません。だって私たちだって、朝から「俺、何のために会社行ってるんだろう?」的なことを言っていたら、自分の存在意義レゾンデートルを失いかねないでしょ?

まあ、私は週五で言ってますけどね。

しゃがめる

世間ではスペースキーで操作するのがデフォルトになっていますが、上下キーでも操作できます。この場合は上キーでジャンプするわけですが、下キーで恐竜がしゃがみます。しゃがむというか、「かがみながら走る」という方が正しいでしょうか。

空気抵抗の低減によるスピードアップとかはない
空気抵抗の低減によるスピードアップとかはない

ちなみにAndroidタブレットのGoogle Chromeでもこのゲームはできますが、タップで操作するためしゃがむことはできず、ひたすらジャンプするしかないということになります。

一応、一時停止できる

基本的に一時停止という機能はないですが、他のウィンドウをアクティブにするなど、ウィンドウからフォーカスを外すと一時停止します。
設定にもよるかもしれませんが、F10キーを押しても止まります。メニューにフォーカスが移動するので。

長時間遊んでいると夜になる

長時間と言っても何十秒かだと思いますが、ずっと遊んでいると夜になります。

わかりにくいですが星と月が出てる
わかりにくいですが星と月が出てる

ドラゴンクエストⅢのかの名脇役・ソクラス

わたしは ソクラス。こうして 夜になるのを 待っています。でも 夜になると なぜか 朝が まちどおしくなって しまうのです。――ソクラス

とかどこかの哲学者っぽいことをつぶやきながら何もせず夜を待つだけですが、このゲームの場合は恐竜が駆けたり跳ねたりという労働を行った末に夜になっており、ソクラスとはえらい違いです。
哲学的には「恐竜が走っているということは確実に時間が流れている、ではなぜ夜にならないのか?」という疑問を解決した仕様だといえますし、技術的には背景色を180度入れ替えることによりさりげなくゲームの難易度向上を実現していますし、ゲームデザイン的には時間軸の存在イコールある種のストーリーの存在をも匂わせています。朝も昼も、夜になってもなお荒野を駆ける小さな恐竜。困難を飛び越えつつ世界の果てへと駆ける彼の身に何があったのか。その小さく澄んだ瞳が見たものとは――

それにしてもソクラスっていつ寝てるんでしょうね。
夜行ったら行ったで「夜が明けるのを 待っています。」とか言ってるし。

プテラノドン的な生き物が飛んでくる

そのうち、水平線の彼方から、水平方向に何かが飛んできます。

特に頭のとんがりで表現してるの凄いと思う
特に頭のとんがりで表現してるの凄いと思う

こ、これはどう見てもプテラノドンじゃないか!

なおドラゴンクエストⅣにも「プテラノドン」というモンスターが出てきますが、実際のプテラノドン(の予想図)とは何かが違います。俗に言うところの「これじゃない感」を生じざるを得ず、どうしてプレイしていた当時そういう違和感を覚えずにすんなり受け入れていたのか、今となってはよくわかりません。さらに言えばプテラノドンなんてまだいい、色違いの「アイスコンドル」なんかコンドルの雰囲気0%ですからね。コンドルシリーズはⅢのヘルコンドルでやめておけばこんなトンチキなことにはならなかったのに……

ちなみに私が最後にプレイしたドラクエはⅥが最後なので、私にとっての最後の魔王はデスタムーアです。青春時代の魔王はミルドラースですけど。
オルゴデミーラとかラプソーンとかもうよくわかんない。てかこういう『っぽい』感じの名前考える人は本当にえらいよね。

恐竜の大きさとサボテンの大きさが同じだけど大丈夫なのか?

大きく話が逸れましたが、改めてよく見ると、もしかしてこれ、恐竜の大きさとサボテンの大きさが同じじゃないですか?

同じ高さ
同じ高さ

ちょっと待って、冷静に考えて恐竜と同じ大きさのサボテンがにょきにょき生えてるってどうなんだろう? おかしくないか?
フィクションだからどうでもいいじゃねえかそんなの、と言われればそれまでですが、私がイメージしているよりもサボテンがバカでかく、逆に恐竜が意外と小さかったりすれば、このゲームは現実的な登場キャラクターの大きさまでも再現している、ということになるかもしれません。

実は結構現実的なスケールかもしれない

逞しく長い後脚と尻尾。ショボい前脚。デカい頭。
この恐竜が、ティラノサウルスであることはまず疑いありません。

まあ似た恐竜はいるかもしれませんが、例えば小説の公募といえば電撃小説大賞であるように、こんな感じの恐竜といえば自然とティラノだろうということになるわけです。アロサウルスはすっこんでろ。ついでにガガガ文庫もすっこんでろ

ということでWikipediaでティラノサウルスを引くと、

骨格標本から推定される成体の体長は約11 – 13m、頭骨長は約1.5mで、その体重は概ね5 – 6tと推測されている(体重に関しては異説も多い)。

ということなのですが、これは鼻先から尻尾の先までが11~13メートルということで、実際に前屈みに立っている時は人間の2倍程度のようです。

Tyrannosaurusscale.png By Matt Martyniuk (Own work) [GFDL (http://www.gnu.org/copyleft/fdl.html), CC-BY-SA-3.0 (http://creativecommons.org/licenses/by-sa/3.0/) or CC BY-SA 2.5-2.0-1.0 (http://creativecommons.org/licenses/by-sa/2.5-2.0-1.0)], via Wikimedia Commons
Tyrannosaurusscale.png By Matt Martyniuk (Own work) [GFDL (http://www.gnu.org/copyleft/fdl.html), CC-BY-SA-3.0 (http://creativecommons.org/licenses/by-sa/3.0/) or CC BY-SA 2.5-2.0-1.0 (http://creativecommons.org/licenses/by-sa/2.5-2.0-1.0)], via Wikimedia Commons

つまりティラノサウルスを見上げた、いわばは3~4メートルといったところ。ちなみにキリンさんは4~5メートル。あれ、意外と小さかった……

加えて上記は大人のティラノサウルスの場合であって、あのドット絵の愛くるしさから考えるとおそらく成体というよりも元気のありあまる年頃のわんぱくキッズではないかと思うので、もしかしたら人間より少し大きいくらいの背の高さ、つまり2メートル前後かもしれません。上の図で言うところの青いヤツくらいの。

ということは、当ゲームのサボテンは約2メートル。人間よりひとまわり大きいくらいのサボテンなら、場所によっては現実的なレベルで生えていそうです。

ただし残る懸念点として、「2メートルのティラノが2メートルのサボテンを飛び越えられるのか?」という問題があります。
正直この件については、ヤングダイナソーでも極めて怪しいと言わざるを得ないな……獲物に跳びかかりはするだろうけど垂直跳びなんてしないだろうし……と思っていたのですが、Yahoo!知恵袋にこんな質問と回答が。

Q: 人間対恐竜が戦うならどっちが勝ちますか?

A: 人間でしょうね。(中略)ですが小型の肉食恐竜ならすばしっこくて、団体行動、跳躍力が2m以上のやつもいますからジャングルでの歩兵対恐竜なら武装にもよりますが苦戦ですね。

人間対恐竜が戦うならどっちが勝ちますか? – Yahoo!知恵袋

そうなんですよ。そういうことなんです。
2メートルいけます。よかったよかった。

ゲームの舞台がちょっぴり暗示的

そんなサボテンを軽やかに飛び越えてくれるティラノサウルスも、K-Pg境界まで飛び越えることはできず、プテラノドンさんと一緒に絶滅してしまいます。

白亜紀末期。巨大隕石が落下したわけですが、その現場はメキシコのユカタン半島。
そしてメキシコといえばサボテン――そう、このゲームの舞台は、空から隕石が迫り来るメキシコの荒野だったのです。つまりこのティラノは隕石から逃げるために――

俺「暇つぶしにゲームでもやるか~。妹よ知ってるか、LANケーブル引っこ抜くとチョロメでゲームができるんだぞー」
妹「(ガシッ)――やっぱり、あなたがティラノの末裔だったのね?」
俺「!? な、何だ? どうした妹!?」
妹「――これはゲームじゃない。あなたが見ているのはブラウザーの暇つぶしゲームなんかじゃないの。クロムは閉ざされた時間軸を突き破った。今まさに、空から隕石が迫り来る6500万年前のメキシコの荒野をリアルタイムに映し出している」
俺「6500万年前? 恐竜時代が……チョロメのウィンドウの中に?」
妹「見渡す限りの荒野に、これから悪魔が墜ちてくる。全ては焼き尽くされ、冷たい死の時代を迎える――そして、このは絶滅の運命から逃れようとしているティラノサウルス。あなたの前前前世の姿」
俺「ど、どういうことだよ!? 俺の前前前世が恐竜って……!」
妹「この仔を滅びの運命から救う。それがあなたの存在意義レゾンデートル――この仔を救うことができれば、この地球が辿ってきた『例外エラー』の全てが解決され、偽りの『記憶メモリ』は解放される」
俺「い、偽り……?」
妹「全ては正しくなる。そしてあなたは……ティラノサウルスの血を引く、世界の帝王レックスとなる」
俺「レ、レックス……? ティラノサウルス……レックス……だと?」
妹「我らが神の名において命ず――運命のスペースキーを押しなさい」
俺「!?……ゆ、指が……勝手に……!」
妹「新しい世界の帝王の誕生を楽しみにしているわ……お兄ちゃん」(ドロン)
俺「い、妹!? 妹――――ッッッ!!」

 

 

 

 

運命から逃れられなかったティラノの図
運命から逃れられなかったティラノの図

 

 

 

Vivaldiでもゲームはできるんだけどちょっとアレ

そうだね、前前前世は隕石じゃなくて彗星だよね。
ネタバレ読んだだけで映画は観てないんですけどね。

そんなこんなで、ここからが本題なんですけど

いろいろと妄想を膨らませることのできるこのゲームですが、「Vivaldi」や「Kinza」でもほぼ同じ内容のゲームができます。
これはこのゲームのパクりを搭載してある、ということではなく、これらのブラウザーがGoogle Chromeと同じ部品(「Blink」というレンダリングエンジン)を使っているという背景があるからです。

しかし、Vivialdi開発チームは何を思ったのか、このゲームに登場するキャラクターを変更してしまいました。

「Kinza」は恐竜もサボテンもそのまま使っているので、別に何かのいちゃもんがついたので変えた、という訳ではなさそうです。
まあ「今はBlink使うよ、でも将来的には独自のレンダリングエンジンを搭載したいよ」というリップサービスを旧Operaユーザー向けにぶちかましたテッちゃんなので、開発チームにも「あんまりBlinkっぽい部分は残しておきたくない」、という思いがあるのかもしれません。日本ジャパンではこれを反骨精神といいます。アイスランドでどう言うかは知らない。

Vivaldiではこうなる

初めて見た時はある意味驚きだったし、そういうサービス精神は凄くいいと思うんです。でもそうは言っても、もうちょっと頑張ってほしかった、というのが本音なんですよ。
いえ、プラス方向にカスタマイズされてるならいいんですけど。ぶっちゃけ割と残念なことになってるっていうか、なぜそうしたとツッコみを入れざるを得ない部分が多いというか。

細長い何か
細長い何か

ティラノの替わりにスタンバっているのは、Vivaldiのマスコットキャラクター・トニー
その正体は、Vivaldiのブランドカラーと本拠地であるアイスランドの火山をイメージした赤い「溶岩ボール(lava ball)」らしいです。ボールというからには丸いはずですが、どうしてこんなに細長いの……
よくわからないのは、Chrome版のティラノだって当たり判定的には正方形に近いはずなので、あえて縦に細長くする理由が見当たらない点。ま、丸いトニーを返せー!

サボテンはやけに鮮やかに
サボテンはやけに鮮やかに

サボテンはサボテンのまま。なんか左端が切れてる……
せっかく色付けるならもうちょっと植物的なリアリティのある緑色にしてほしかったなぁ。

ていうかティラノはトニーに替えたのに、なぜサボテンはキープしたのか。
トニーのアイデンティティがアイスランドなんだから、アイスランド的な何かに変えたらいいんじゃないだろうか。アイスランド詳しくないので何がいいのかはわかんないけど……

……えーと……
……えーと……

プテラノドンに至ってはなんだかよくわからない飛翔物体に。これほんとに何だろう……

夜(暗い)
夜(暗い)

色反転してるだけだこれー!

どう見ても魔界です。本当にありがとうございました。

というわけでこれからもVivaldiには頑張ってほしい

とまあゲームのビジュアルの完成度はさておき、Vivaldi自体はとてもいいブラウザーだと思うし、使ったことない人は一度インストールしていじくり回してみるといいと思います。

ぶっちゃけ最初にリリースされた頃は「こりゃまだ様子見だな」と感じましたが、最近は「これなら乗り換え候補になるな」と思えるレベルに到達しています。VivaldiにはGoogle Chromeの拡張機能をインストールできますが、人によってはもう拡張機能を入れるまでもないレベルの理想的なオールインワンブラウザーになっているかもしれません。

Vivaldiユーザーの多くはPresto時代の旧Operaユーザーじゃないかなと思うんですが、そういう人たちがテッちゃん率いるVivaldiに親近感を持ち続けているのも、単にブラウザーが素晴らしいからと言うだけでなく、いわゆるテッちゃんの人柄の良さのようなものとか、イースターエッグのゲームをわざわざカスタマイズしちゃうようなサービス精神とかにもあるんだろうなぁと思うのです。

そんなわけなんで、まずはせめてあの飛翔物体と魔界モードをなんとかしてください。
かしこ。

おまけ

その頃Operaは
その頃Operaは

どうしてこんななっちゃったかなぁ。