梅雨の時期に入りましたが、都会の方ではいかがお過ごしでしょうか。

九州の田舎では、雨が降ると傘を差して歩きます。そうすると、雨の音、植物の音、動物の鳴き声、人々が屋内で楽しそうに過ごす声など、車輪で走り去る時には気づかない、色々な音が耳に流れ込んできます。

YouTubeで雨の音を聴いてリラクゼーションするのもいいですが、本物の雨の日の音を聴くのもいい時間を過ごした気分になれます。多少肩は濡れますが、私たちは自然というものに親しむことのできる最後の世代かもしれません。

そう考えると、等幅フォントって自然と似ていますね。もともと世界には等幅フォントしかなかった。でも、見た目がよくないとか、読みにくいとか、そんな人間の都合でプロポーショナルフォントが無理矢理に導入され、等幅フォントは虐げられた。でも今、世界中の人々が気付き始めている。見た目より大切なものがあることに。そして、等幅フォントの使用が必要な価値観の一つとして見直され始めている――

そんな等幅フォントの一つとして有名なのが、「MeiryoKe」です。

二十一世紀のプロポーショナルフォントの旗手であるメイリオ。それを等幅フォントとして再発見するという大胆な発想には、さながら梅雨の晴れ間に夏の青写真を見るかのような爽快感があります。その風景を想いながら、銀色のラップトップ・コンピュータの中に少女が紡ぎ出すのは、MeiryoKe_Consoleで書かれた、ある仮想の町での恋の話――そこにはライセンスなどといった人間の私利的な立場とは一線を画す、人間の自然な気持ちを尊重するための技術が静かに存在しているのです。

後半へ続く。

MeiryoKeとは

Windows Vista時代から導入されたフォント「メイリオ」の等幅バージョンです。

メイリオはドットピッチの大きい(要するに粗い)画面での視認性にも定評があり、今に至るまでずっと使われていますが、そのメイリオを改変して等幅フォントを新しく作ってしまおう、というものです。

なお前提として、MeiryoKeはマイクロソフト公式のものではなく、非公式なものです。
またライセンス上は改変が禁じられているので、本当はやっちゃダメな行為です。熟知すべし。

(補足)等幅フォントとは

そもそも「等幅フォント」と言われてぴんとこない人もいるかもしれませんが、プログラミングの世界では、「.」「,」といった小さい記号が特別な意味を持っているので、全体的な見た目の良さより、文字の読みやすさや識別しやすさを優先します。なので、すべての半角文字が同じ幅で表示される等幅フォントが重宝されているのです。

なお等幅のもう一つの利点は、見た目の文章量と文字数とが正比例していることです。「結構書いたつもりだけど文字数カウントしてみたら意外と少なかった」というがっかり感を回避できつつ、見た目の文章量も少し増えやすいので、ライトノベルの公募作品の執筆やライティングのアルバイト時のモチベーション維持にも有用といえるでしょう。

MeiryoKeの配布先

かつては仮想の町・ジオシティーズにありましたが、町が滅びたためかGitHubに移動しています。

MeiryoKe
https://meir000.github.io/MeiryoKe/

ところで、そのGitHubは2018年秋にサティア・ナデラさん率いるマイクロソフトに買収されました。
つまり今の状況は「マイクロソフトの関連企業のサービスで、マイクロソフト製品を改変するパッチを配布している」ということになります。いい話だと思いませんか?

MeiryoKeの新旧比較

いつもならもうちょっと導入のテキストが続くところですが、私はMeiryoKeのメインユーザーであろう技術職の方々が穏やかな顔しておいて実に短気でありここまでの文章を読むにも眉間に皺を寄せていることを察しているので、本題に入ります。

公式サイトによると

meiryoKe_gen_6.30rev5 – 2019/09/23
新たに全体を1から作り直しました。
メイリオを元にしていてフォント名も同一ですが、rev1と rev5で結構違いが出ます。
文字幅が変わっている文字もあります。
ご注意ください。

とのことですので、実際にrev1とrev5でどう違うのかを画像で確認してみます。

ただし前述の通り、MeiryoKeは正確にはライセンス的にアレなので、私のPCでパッチを実行してフォントを作成したり、ましてやそれをインストールして使ったりすることはできない――と悩んでいたところ、ついさっき偶然それぞれのフォントのプレビュー画像が保存されたCD-Rが差出人不明の誰かから送りつけられてきたので、ありがたく使わせてもらいます。

具体的な比較方法は目grepでお願いしますと言いたいところですが、rev1とrev5の画像をそれぞれ別タブで開いて、交互にタブを切り替えて観察してもらった方がわかりやすいかと思いますので、そうしてください。

MeiryoKe_Gothic

MeiryoKe_Gothicは、汎用の等幅メイリオです。

MeiryoKe_Gothic rev1
MeiryoKe_Gothic rev1
MeiryoKe_Gothic rev5
MeiryoKe_Gothic rev5
MeiryoKe_Gothic Bold rev1
MeiryoKe_Gothic Bold rev1
MeiryoKe_Gothic Bold rev5
MeiryoKe_Gothic Bold rev5

一見そこまで変化した感じはないですが、全体的に少しだけ横に細くなっています。
あと「+」記号が縦長な感じだったのが、縦横が同じ長さになってます。

MeiryoKe_Console

MeiryoKe_Consoleは、プログラミング向けの等幅メイリオです。

MeiryoKe_Console rev1
MeiryoKe_Console rev1
MeiryoKe_Console rev5
MeiryoKe_Console rev5
MeiryoKe_Console Bold rev5
MeiryoKe_Console Bold rev5

MeiryoKe_ConsoleのBoldはrev5で新規に追加されたとのことで、rev1のBoldはありません。

特にわかりやすいのが、「0」に斜線が入ったのと、「1」の形が自然になったのと、あと記号周り。
英字では特に「W」「w」の中央部分の線が細くなってるのに目が行きますが、公式によると「フォントサイズによって文字が崩れていた」のを修正したとのことで、その関係かもしれません。

ところでプログラミング向けフォントではよく「0」に斜線が入っていますが、これで個人的に恩恵を受けたことはあまりなく、むしろあまり好みではないのです。
理性では「O(オー)と間違えないから安心!」と思いつつ使うわけですが、ぱっと見た時に「あれ? 明らかに0のはずなのに0じゃない?……あぁ違う、これが0なんだった」ってプチプリしませんか? 私だけか。

MeiryoKe_PGothic

公式によると「文字幅を MS Pゴシック に似せたフォント」とのこと。

MeiryoKe_PGothic rev1
MeiryoKe_PGothic rev1
MeiryoKe_PGothic rev5
MeiryoKe_PGothic rev5
MeiryoKe_PGothic Bold rev1
MeiryoKe_PGothic Bold rev1
MeiryoKe_PGothic Bold rev5
MeiryoKe_PGothic Bold rev5

アレ? 文字幅がPゴシックということは等幅ではないってこと? と思ってよく見たら、確かに大文字と小文字とで幅が全然違いますね。今気付いた。

何となく「MeiryoKe=等幅」とか考えていましたが、正確には「MeiryoKe=MS ゴシックシリーズのメイリオ版」という言い方が正しく、等幅なのは4フォントのうちMeiryoKe_GothicとMeiryoKe_Consoleの2つでした。熟知すべし。

MeiryoKe_UIGothic

公式によると「文字幅を MS UI Gothic に似せたフォント」。プロポーショナルです。

MeiryoKe_UIGothic rev1
MeiryoKe_UIGothic rev1
MeiryoKe_UIGothic rev5
MeiryoKe_UIGothic rev5
MeiryoKe_UIGothic Bold rev1
MeiryoKe_UIGothic Bold rev1
MeiryoKe_UIGothic Bold rev5
MeiryoKe_UIGothic Bold rev5

特にBoldの幅が狭くなったようです。
というか、Bold rev1のひらがなが他のMeiryoKeと同じっぽいので、それが修正された感じ?

本題は以上です。

余談1: MeiryoKeのライセンスについて思うこと

まあまあ堅めの話になり恐縮ですが、前述の通り、MeiryoKeは、ライセンス的にはアレです。
それにもかかわらず、検索してみると多くの人がMeiryoKeを紹介している、そんな現状があります。
しかし個人的には、このアレさは一応考慮はしておくべきものの、怖がるレベルで深刻に考える必要はないのだろうなあ、とも考えております。

なぜなら「マイクロソフトがやるなと言わないということは、どうでもいいと思ってるんだろ」と解釈するのは、諸々の状況を踏まえた上で、かつ一般的価値観に照らしてまあまあ自然だと思うからです。ライセンスを作ったマイクロソフトが2012年から8年間も目くじら立てずに放置しているのだから、それ以外の誰かがマイクロソフトに代わって目くじらを立てて吠えるのもおかしな話です。ホエールだけに。

さらに言えば、「そもそもライセンスは何のために作られているのか」というのを明確に知ることも重要に思えます。合理的な存在意義のないライセンスは無に等しいからです。
もちろんマイクロソフトが作るライセンスにはちゃんと合理的な存在意義があり、それ故にユーザーはライセンスを守る必要があります。しかしその存在意義というのは、ユーザーの利益保護とかいうようなほんわかした話ではなく、結局は「何かあったときマイクロソフトに都合良く事が運ぶようにする」ことにあります。つまりは、利益を最大化し、損失を最小化し、万一裁判になったらスムーズに勝つ。そのための決まり事です。

MeiryoKeはユーザーの利益を最大化するだけのもので、これによりマイクロソフトに損益を発生させることはありません(むしろWindowsの有用性に貢献しているのだから利益にすらなっているとも言えます)。そんな状況で「ライセンス違反はライセンス違反だから、それが社会の要請だから」と星の数ほどあるライセンス違反を世界から一つ一つ潰すための費用を用意し、その金でユーザーの逆恨みを地道に買っていくような損な行為をするとは思えません。このライセンスはマイクロソフトに明らかな損益を与える、例えばフォントを改変して公式と偽って高値で売るような極悪人にできるだけ短時間で完全勝利するためのものであって、MeiryoKeのような放っていても何もないような相手をプチプチと潰してストレスを解消するためのものではありません。

何も言われないならライセンス違反してもいい、というのは言い過ぎですが、マイクロソフト側のメリットを極大化しデメリットを極小化するために存在するライセンスなのに、そのライセンスに違反することに怯えたユーザーが活動を萎縮させ、結果様々に顕在化するはずだったメリットの芽が摘まれてしまっては、むしろライセンスの存在が損益を発生させるということになってしまいます。

そういった理由から、MeiryoKeがもしライセンス違反だとしても、空気を読むという特殊能力を有する日本人である我々としてはマイクロソフトの利益になる可能性はあっても損益になる可能性が全くないライセンス違反ならボランティア精神を発揮してじゃんじゃんやってあげるべきなのではないかとすら思うのですが、ナデラがそれをナイスと思ってくれるかは別の話だし、違反しようぜとか言い切ってしまうのも社会的動物として違和感があるので、皆「いいとは言えないし、ダメなんだろうなとは思うけど……まあ、アレだな」と言うにとどめている、という状況であると推察します。

また、こういうことを改まって言うと、マイクロソフトが好きで正義感の強い優しい人(揶揄ではなく実際そういう人が多いように思います)が捨て身で襲いかかってきて、結果として返り討ちに遭い、マイクロソフトからは事なかれで知らんぷりをかまされ、皆が社会の理不尽の一端を垣間見てしまうことにもなりかねないため、世の多くの人々はそもそもこれをシロとかクロとか言ったりせずにただ「これは……アレだね」というような言い方をするわけです。

だから、これは色んな意味でアレなのです。私は後々ラノベ作家として名を馳せることになっているので、今回はMeiryoKeを自分で作成したりインストールしたりフォントプレビューをキャプチャーしたりする行為は未来のKADOKAWAや未来の編集さんや未来の読者諸氏、その読者諸氏の末代の子孫の皆様に対して迷惑をかける可能性があるので自覚を持って慎んだわけですが、そういう特殊な人でない限りは、少なくとも作成したMeiryoKeフォントを誰かに渡したりとかしない限り何の問題もないだろうなあ、ということです。

余談2: BIZ UDゴシックはどうなのか

とはいえ、そんなこと言われたらむしろ心配になってしまう、気になって気になって仕事の効率が落ちる……という人もいるかもしれません。そもそもMeiryoKe公式から「個人使用にとどめて」と言われているものを、配布とかしないとはいえ仕事場で使っていいのか? と思う人もいるかもしれません。

そういう人には、Windows 10なら「BIZ UDゴシック」という選択もあります。
Windows Updateするとタダでもらえるフォントですが、これといってユーザーに通知されるわけでもないですし、ぶっちゃけマイクロソフトも積極的に使っているようには見えないので、気付いていない人もいると思われます。

BIZ UDゴシック
BIZ UDゴシック

フォントプレビューは上の通り。

日本語部分はメイリオと比べると扁平さはなく自然な縦横比ですが、例えば游ゴシックが自然な字形だとすれば、こっちは名称にUD(ユニバーサルデザイン)と冠していることもあり、読みやすさ重視な雰囲気といえるでしょう。でも他のコッテコテのユニバーサルデザインフォント(?)と比べると、比較的ラノベの話もわかりそうな顔していますよね。「り」とか。「世」の左下とかね。

まあラノベ執筆への適性は横に置いといて、ひとまずソースコード表示の適性をテストしてみましょう。
しかしそれにはMeiryoKe_Consoleの表示テストの画像が必要なわけで、でも私のPCにMeiryoKeを入れるのは将来のラノベ作家的にライセンスがアレだしなあ、ああどうしようかなあ――と思っていたところ、いきなり差出人不明の誰かから謎のメールが送られてきて、それに偶然表示テストのキャプチャー画像が添付されていたので、それを使おうと思います。いやあ誰だか知らないけどありがてえ。こういう気が利いてる人こそ、後々電撃小説大賞で大賞を獲ったりするんでしょうね。

MeiryoKe Consoleでphpのコードを表示したところ
MeiryoKe Consoleでphpのコードを表示したところ
BIZ UDゴシックでphpのコードを表示したところ
BIZ UDゴシックでphpのコードを表示したところ

MeiryoKe_Consoleは(メイリオもですが)サイズによっては日本語の横画が細くなってしまい、やや読みにくくなってしまうのが気になりますが、BIZ UDゴシックはそういった問題はないようです。

ただ個人的に気になるのは、やはり視認性に振った代償として、文字としてどこか自然さを欠いてしまっている点でしょうか。まあそういう意味ではメイリオも同じに思えますが、メイリオは全体に扁平でそもそも自然な字形という以前の問題だった一方、BIZ UDゴシックは縦横比は自然なので逆に字形が気になるのかもしれません。

最後にラノベ文章の表示のテストもやろうかとも思いましたが、コメントアウトされている部分の日本語でだいたい想像できるかなと思うので、省略します。実際に見るとそんなに違和感はない気もするので、あんまり細かいところを気にせず割り切れば、プログラミングにもラノベ執筆にも使いやすいフォントなのかもしれません。どうでしょ。

余談3

マイクロソフトの新しいボスの名前が「サティア・ナデラ」だと聞いた時、「サティア」という響きから何となくマリッサ・メイヤーみたいな感じの女性をイメージしてしまい、いざ写真を見に行ったらスキンヘッドのおっさんだった時には軽く「?」となったということを明確に書き記しておこうと思います。

と書いた後に「正面から見るとスキンヘッドに見えるだけで、実際にはスキンヘッドではないのかもしれない、だとしたらまずい」と思って画像検索したところ、後頭部が白い写真が多く、これは後頭部に髪の毛がまだ残存しているのか? それとも光が反射するほどにスキンヘッドなのか? とさらに訳がわからなくなってしまったので、とりあえずこの話はどうでもいいです。

あ、一応Wikipediaに載ってる写真は拡大すると側頭部に短い白髪が残っているので、スキンヘッドではないです。
でも2013年現在の写真のようなので、2020年現在どうかはわかりません(←どうでもいいと言っておきながらこだわる人)(というか皆おそらく本当にどうでもいい)