日本と言えばお米。お米と言えば日本。それぐらいお米という食べ物は日本人から愛されており、日本人から米を奪ったらきっと米どころを中心とした暴動が起こるに違いない、というぐらい重要な食物です。老若男女みんな大好き。湯で煮て食べるミステリアスな魔法の穀物。ノーライスノーライフというわけですよ。アミロースとアミロペクチンがアルファ化して織り成される極東の神秘。プリンセステンコーさんもワールドツアー中のPerfumeもきっと楽屋裏で食べてます。
そんな白いうるち米がプラスティックトレイの上に広く敷かれているそのまぶしさと言ったらなく、これはもう米というより光の塊ですね。振りかけてあるごましおにさりげない心遣いまで感じられます。奥ゆかしいですね! そう、このお米は日本そのものです。米の名産地である新潟や秋田ののどかな景色が目に浮かぶようです。なんだか秋田美人的な2次元の嫁が欲しくなりますね。チキンカツ弁当の米がどこの米かは知らないですけどね。私の引いた個体にはご丁寧にカリカリ梅まで載っていました。ありがとうございました。
そんないたいけなお米フィールドの隣に堂々と鎮座するのがチキンカツ。パン粉の衣をマッシヴに纏った欲望の権化。やっぱりなんだかんだ言って肉だよね、ほら肉だよ、油で揚げましたよ、カツですよ。ね? という有無を言わせぬ説得力があります。それはプラスティックトレイ(小さめではあるものの決して小さくはない)の半分を占めようかというかなり大きいもので、お米の一部はオーバーレイされているのであります。なんてことだ――私たちの白いお米がメリケンチキンカツに浸食されている! これを見て日本の民草は何を思うのか――という論争がざわわざわわと巻き起こりそうですが、まあ私は政治的なことにはほとんど興味はなくただうまそうとしか思わないんですけどね。空腹の前では人間はあまりにも無力です。日本の中のアメリカという言い方があるわけですが、平和主義な私は平和的に事が運んでほしいと思っています。このチキンカツはけっこう大きく、アメリカ語でいうところのボリューミーというやつです。上には粒マスタードがかかっており、ウスター系のソースがあらかじめ衣の一部に染み込んでいた気がします。ごちそうさまでした。
そんなチキンカツの下に敷き詰められているのは、ケチャップ的な何かで真っ赤に和えられたスパゲティです。スパゲティだからイタリアンだろうがと思うかもしれませんが、問題はその赤さです。真っ白なプラスティックトレイを完全に染め上げるすごく赤い油成分。これはもう完全に中国ですね。もしかして日本の地下資源を狙っているのではないか? なぜあえてチキンカツの下に潜伏しているのか? なんか妙に量が多くないか? 天安門ですか? 民主化してますか? など、箸でつついてもそもそと食べるほどに色んな疑念が湧いてきます。味付けはしっかりしたケチャップ味です。チキンカツと交互に食べると効果的っぽいですが、下から引き出して食べるのが少し面倒で結局最後にまとめて食べました。アルデンテというわけではないですが決して柔らかすぎもせず、割と絶妙なかたさ具合で、これは他のコンビニや最近値上げした弁当チェーン店も真似して良いと思います。主席も大満足のクオリティ。
しかし最後に特筆しておきたいのは、米とチキンカツとスパゲティが、母なる大地であるプラスティックトレイの上できちんと味の調和を醸し出していたということなのです。
坂本教授さんによると、世界はあと20年で終わるそうです。国も同じで、各国の思惑や主張はあるかと思いますが、どうせ滅びるのなら最終的には穏やかに調和した最期を迎えたいものです。少なくともソース袋をチンして暴発させて終わるようなことのないようにしたいものですね。何でも一度暴発すると止まりません。
やはり平和が一番。おいしさ一番。地域差があるかもしれませんが、税抜き399円でした。
2035年までに一度ご賞味あれ。