そこまでありふれた事象ではなく、まあどちらかというと珍しい事象だといえるので、あんまり発生した直後に書くと身バレしてしまうかなあ……といういらん心配をしたため、適当に時間が経った今、記事にしたためているものです。
したがってこの記事公開の時点で、サポート対応等について何らかの違いはあるかもしれませんので、その点ご留意ください。
参考までに、ということで。
「独自ドメインを他社のサーバーからエックスサーバーに移動させる」場合、これといって問題は発生しません。
独自ドメインを仮に example.com とした場合、
と、セオリー通りです。
ホームページがサーバー間で移設され、見られなくなる時間帯も特になく、お客さんにシンプルな感謝をされつつ、つつがなく仕事が終わります。
さて、問題は「エックスサーバー(以下「旧サーバー」)からエックスサーバー(以下「新サーバー」)に独自ドメインを移動する」というケースです。
ただその前に、
と思う人もいるかもしれません。
確かに普通は、今使ってるエックスサーバーをそのまま使えばいいだけです。
しかし、それができない状況があったりします。
例えば以下のような、「会社Aが業者Bにウェブサイトとサーバーの管理を丸投げしてた」というケース。
ここまでは別に何の変哲もない、よくある流れです。
さて、サイトのリニューアル制作もいよいよ佳境に入ります。
本番利用のためのサーバーとして、エックスサーバーのサーバーアカウントを追加契約。
そして独自ドメインを設定しようとした時に、一つの問題が発覚します。
それは「なぜか独自ドメインの設定ができない」ということです。
なぜできないのかというと、以下の画像の通り。
赤枠の内部で説明されている通りですが、設定しようとした独自ドメインは、別のサーバーアカウントに設定されたままになっています、とのこと。
言い換えれば、「業者Bが会社Aに提供されているのは、エックスサーバーだった」ということであり、先にそのサーバーからドメイン設定を削除しないといけない、ということです。
このエックスサーバーの仕様自体は、私は以前から知っていました。
というのも、同じケースに遭遇したことがあるからです。
そしてこのケースは、一度経験して以降、できるだけ避けたいケースでもありました。
なぜなら、旧サーバーからの設定削除から、新サーバーへの設定追加完了までの約1時間、ウェブサイトが見られなくなり、メールも送受信できなくなるからです。
一応技術者である私は、ここで若干後悔します。
なぜなら、Windowsのコマンドプロンプトでnslookup
を実行すれば、多くの場合レンタルサーバー名がわかるからです。先にエックスサーバーだとわかっていれば、このことに事前に気づき、エックスサーバー以外をチョイスする、という手を打てていたかもしれません。
>nslookup 183.90.232.35
名前: sv1234.xserver.jp
Address: 183.90.232.35
まあ、今になって後悔しても仕方ない。
営業さん経由で、会社Aに以下の二点を伝えてもらわないといけません。
特に2点目については、会社Aは「サーバーパネル #とは」というレベルかもしれませんが、それでも頑張ってもらう必要があります。がんばれ会社Aの担当者さん。業者Bに何の不満があったかは知らないけど、このかったるい作業を終えればリニューアルサイトの公開ができるんだ……。
しかし、会社Aの担当者から思いもよらぬ返事がきます。
「ケンカ別れしたから、業者Bには連絡できない」と。
青春時代かな?
「ケンカ別れ」というのは、単に都合のいい方便なのかもしれません。
実際には「別に連絡取れないわけではないんだけど、いまさら連絡取るのも気まずいなぁ。よし、ケンカしたってことにしちゃえ」くらいである可能性もあります。
その一方で、「弊社Aと業者Bの担当者同士が実際に河原で殴り合った結果、契約延長を見送ることが決定しました」ということかもしれず、営業さんとしては「ケンカして別れたと言われた以上、それ以上はツッコめない」という状況であることも考えられます。
ケンカ別れというのは極端なケースかもしれませんが、それ以外にも今のサーバーIDにドメイン設定が残ったまま、削除できずにどうにもならないケースというのはありえます。
実話ではなく、ありうると思ったのを書いただけですが、どれも普通に(?)ありそうで怖い。
ちゃんとせえよ、と言いたくなりますがどれも架空のケースです。架空……ですよね?
私の知ってる人に本格的に追っ手から逃げている人がいますが、そういうガチの逃走中の人でない限り、何かしらの方法で足はつくものです。なので「業者に逃げられたなら追って捕まえろ、そしてドメイン設定を削除させろ、それから依頼しろ」と言いたいところですが、そこまでするのはちょっと……、というのもわかります。
そんなこんなで、「旧サーバーのユーザーと連絡がつかず、ドメイン設定を削除してもらえない」という状況が生まれてしまいました。
では、このような状況では、どうドメイン設定を進めればいいのでしょうか?
サーバーパネルで、既に別のエックスサーバーに設定されている独自ドメインを設定しようとした場合について、公式ヘルプには以下のように書かれています。
ドメイン設定の追加ができない場合
エックスサーバーの仕様上、同一ドメインを複数のサーバーへ設定することができません。
この場合、ドメイン設定時に追加できない旨のメッセージを表示します。ドメイン運用サーバーを変更する場合
よくある質問「異なるサーバーIDへドメイン運用サーバーを変更したいです。」でご案内の手順に沿って、ドメイン設定を追加してください。以上に該当しないドメイン設定の追加をご希望の場合
該当のメッセージにある「サポートに依頼する」ボタンをクリックしてください。追加設定が行えるよう、カスタマーサポートで調整いたします。
今回の状況が、「ドメイン運用サーバーを変更する場合」なのか、それとも「以上に該当しないドメイン設定の追加」に当てはまるか、微妙なところです。
というか、やりたいことはよくある質問「異なるサーバーIDへドメイン運用サーバーを変更したいです。」ページに書いてある通り「旧サーバーのドメイン設定を解除する」ことなのですが、その旧サーバーのサーバーパネルのログイン情報をケンカ別れした業者Bが持っているわけなので、この通りに進めることができません。
これではにっちもさっちもいかないので、後者の「以上に該当しないドメイン設定の追加をご希望の場合」で進めるしかありません。
書いてある通り、エラーメッセージの一番下に出ている「サポートに依頼する」ボタンをクリックして、ひとまずサポートに委ねてみます。
……さて、残念ながら冒頭に書いた通り、これはちょっと前の話なので、「サポートに依頼する」ボタンをクリックした後にどういう画面に遷移したかは、残念ながら覚えていません。
ただ確か、特に問い合わせフォームなどが出てくるわけでもなく、何かサポートに委ねたい事項をテキストで入力させるでもなく、「依頼を受け付けました」的な内容が表示されて少々びっくりしたような記憶があります。まあそれも気軽でいいか。
さて、私の場合、サポートさんから以下のようなメールが届きました。
本件につきまして、サポートにてドメインの所有権が確認できた場合は
ご利用のサーバーアカウント【******】へ設定いただけるよう
調整対応をいたしておりますが、
該当ドメインのWhois情報を確認いたしましたところ、
ドメイン管理事業者様の名義での「代理公開情報」と思われる内容であったため
所有権を確認することができませんでした。誠にお手数ではございますが、以下いずれかの設定をご変更の上、
本メールへご返信くださいますようお願いいたします。– – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – –
[A] 該当ドメインのWhois情報におけるRegistrant Contact(登録者情報)を
お客様自身の情報に変更する[B] 該当ドメインのネームサーバー情報のうち、「ns5.xserver.jp」を削除し
「ns1.xserver.jp」~「ns4.xserver.jp」の4つとする
– – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – – –
つまり、ドメインの所有権が私(というか会社A)にあることを確認できれば、サポート側で何かしらの「調整対応」をします、ということのようです。
[A] のWHOIS情報を所有者の名義にする、というのは一番自然な方法ですが、登録者情報をドメイン管理サービス名義にするやつを利用している人も多いかと思いますので、大抵の場合は [B] の方法をとることになるかと思います。こういう選択肢も設けてくれているのは本当にありがたいですね。
さてこの後の流れについてなのですが、申し訳ありませんが、私にはわかりません。
というのも私の場合、上記の [B] をやったあたりのタイミングで、会社Aとケンカ別れしたはずの業者Bから連絡が来て、結局その人にドメイン設定を削除してもらえたのでした。
もしかしたら、これこそがサポートさんの「調整対応」の結果だったのかもしれません。
つまり、今までは「会社A・業者B・私」という三角関係でしたが、もしかしたらそれにエックスサーバーのサポートも加わって四角関係になり、予想以上の話の広がりに業者Bがビビって重い腰を上げたのかもしれません。
まあいずれにしても、私としては最も理想的なケースになってくれたので、言うことは何もありません。
新サーバーにも問題なく独自ドメインを設定できるようになっており、めでたしめでたしです。
ただ、もしあのまま業者Bがドメインを自分から削除してくれていなかった場合、おそらくサポートさんの「調整対応」なるものが入ったのだろうと想像します。「調整対応」という表現がふんわりしすぎていて、具体的に何が行われるのかは定かではありませんが、もし「調整対応」が行われるとしたら、
サポート: ドメイン所有者でないあなたがドメイン設定をし続けているおかげで、ドメイン所有者様がつらい思いをしているのだけど……。 業者B: あぁ? 何だこのアマァ……? サポート: どうする? 自分でデータを全部バックアップしてから、自分で削除する? それが面倒なら私が削除しちゃってもいいわ。何もかも消えてしまうけどね……(カチャッ) 業者B: ひぃ! します!! 自分で削除します!! だから……い、命だけは……! サポート: 調整対応、完了――。 全て終わったら、ドメイン所有者様にきちんとご挨拶しに行きなさい……じゃ、元気でね。
という感じの状況がよりビジネスライクかつソフトに展開されたのかもしれません。
つまり業者Bのレスポンス感度や強情さにもよるので、サポートさんに「調整対応」してもらった場合にはある程度の期間を要する可能性もあるかと思います。
前述の通り、ドメイン削除とドメイン追加の全処理が終わるまでの間(1時間くらい)は、ウェブサイトもメールも利用できなくなります。
どうしてもこれらを避けたいという場合は、他のブログにも書かれている通り、「旧サーバー」→「別のレンタルサーバー」→「新サーバー」という風に、別のサーバーを経由してドメインを移動させるという、かなりエクストリームな移行作業が必要になります。
でもその場合、メールは短い間でも「別のレンタルサーバー」に飛んでくるわけで、それも絶対に取り逃さないとなると、お客さんは一時的に「別のレンタルサーバー」のメールを受信しないといけなくて、その後は同時に「新サーバー」のメールも受信しないといけなくて、その段階まで来たら「別のレンタルサーバー」はぼちぼち受信しなくてもよくなるという状況になるけど、そんなことをしていたらいつの間にか「旧サーバー」のメールアカウントからエラーが出始めて……という状況になるわけです。移行作業をする私たちもエクストリームですが、お客さんにとってはさらにエクストリームな気がします。面倒がないように業者に丸投げしてるはずなのに、なにこれ超面倒じゃんて思うんじゃないだろうか。かわいそくない?
そう思うと、やっぱり1時間くらいの間、サイトが404になるのも、送信されてくるメールが相手にエラーで返っちゃうのも、我慢してもらうしかないんじゃないかな。
今回の件は、「ドメインの管理自体は業者Bでなく、会社Aがやっていた」ので、エックスサーバーのサポートさんに「調整対応」を依頼できる状況でした。
しかし場合によっては会社Aが、サーバーと一緒にドメインの管理も業者Bに依頼しているというケースもあると思います。
そしてもし(ケンカ別れとかで)業者Bに連絡がつかない場合、ネームサーバーを編集するといった操作を依頼することができないため、所有権を証明することができません。こうなると、新サーバーにドメインを移動させることは不可能となります。
契約自体が終了し、お金も支払われないわけですから、業者Bはサーバー・ドメイン共に維持はしてくれません。
したがって、おそらく一年以内にどちらも失効し、ウェブサイトもメールも使えなくなります。
会社Aがこのドメインを再び使いたいと考える場合、ドメインが失効したタイミングを見計らって再取得するしかありません。
しかし再取得できるのはドメインが失効した場合の話であって、サーバー自動更新の4連コンボに加え、ドメインについても「自動更新オン+クレカ+千円台の安さ+通知メール無視」の4連コンボ、計8連コンボが決まると、永遠に失効しません。それどころか、SEOがバッチリキマった独自ドメインのサイトが、永遠にウェブ上に残り続けることになります。さすがにレアレアのレアだと思いますが、万が一にもそうなった場合はどうすればいいかというと……どうすればいいんだろう。
まあ、別のドメインを再取得して、再出発するしかないですね。過去の自分たちのドメインを早く追い越せるよう、Yahoo!広告とかGoogle Ads(リスティング広告)にお金を突っ込むしかありません。
しかしそのためには、まず気合いを入れて新しいサイトを作らないといけません。でも、過去のサイトのコンテンツはそのままは使えません。後発でそれをやるとコピーサイトと見なされ、ペナルティを受け、最悪検索結果から排除されます。業種を変えるしかないね。
そんな茨の道を歩みつつ、取引先にはひとまず、メールアドレスが急に変わったことをお詫びしないといけないことでしょう。まるで創業当時のようなドキドキ感……!
と少し大げさに話を広げた後で、企業の「IT担当」の人に、私は声を大にして訴えたい。
サーバーの管理をWeb業者に任せるのは、仕方ないです。
でも、ドメインの管理だけは、可能な限り自分たちでやった方がいいです。
専門的な知識がないから……と思われるかもしれませんが、ドメインの取得や普段の管理については、全く専門的な知識は必要ありません。やることといえば、
の三つだけです。
更新費用の支払いは、クレジットカードなどで自動に設定しておきましょう。
そうすれば勝手に4連コンボが決まるので、もはや何もする必要はありません。
そんなドメイン管理を、Web業者に何千円とか一万円とか出して委託するというのは、もったいない話です。
もったいないだけならまだしも、ドメインは、ネット上の住所+ネット上での社名です。
住所と社名を維持する作業を、他社に委ねてしまうのは、本来とても危険な行為だと思います。
※サイトリニューアルの際などに、ドメイン管理サービスのコントロールパネルにログインしたい、というリクエストがあるかもしれません。その場合には業者を信用してもいいでしょうが、一通り作業が終わったら、パスワードを変えることをおすすめします。
ドメインは年額1,000円~3,000円程度と安いものですが、あなたの会社の貴重な財産です。お大事に。
エックスサーバー同士の移行はかんたんと思いきやむしろ複雑、そして旧サーバーを連絡のつかない他人が管理している場合はとっても面倒、という話でした。
とはいえ、サポートさんがきちんとしていたので、何をどうすればいいのかもわからん、と迷うことはなさそうです。
憶測ですが、サポートさんの調整対応が入る場合、やむを得ず時間がかかるケースがありそうですので、サーバー間ドメイン移動の話が出たら、まずは移行元のサーバーが何かは確認すべきでしょう。
そしてWeb業者各位におかれましては、お客さんのウェブサイトとメールの確実な運用、あるいは我々の業務の円滑な遂行のためにも、ドメインは自分たちで管理した方がいいですよ、と言ってあげるのが、健全なウェブへの貢献に繋がるのではないかなぁと思っております。ちょうどアレの何番目かに当てはまるんじゃないでしょうか。ほら最近よく言うじゃん、なんかほら、アレだよアレ。最近やたらよく使われる、社会貢献を分類してまとめましたみたいなヤツ。
ところで、ひいきにしているサーバーがあるとなかなか他のサーバーを探ったりしないので、エックスサーバーをあんまりよく知らない、という人もいるかもしれません。
今現在私の会社では、特別な理由や指定がなければ、エックスサーバーを使っています。なぜかというと、
といったところです。
かなり褒めた書き方になってますが、あえて褒めずに言えば、「他の格安サーバーよりかは高めなので、それに応じたスペックとユーザー層なだけ」ということです。
「格安サーバーよりは高め」というのは、メールのスパム判定と密接に関係します。
スパム業者はできる限り月額が安く、かつ制約の緩いサーバーを選ぶので、そういうサーバーはブラックリストに載りやすい(スパム判定されやすい)わけです。エックスサーバーはスパム業者にとっては高いので、結果ブラックリストに載りにくく、載ってもすぐ対処される、といえるかと思います。
スパム業者でない中小企業のサイトにとっては、月1,000円で上記のスペックは必要十分と思われますので、ランニングコストとしてかなり安いと感じます。大きめの企業でも十分耐えるんじゃないでしょうか。
今まで仕事柄、望む望まざるに関わらずいろんなレンタルサーバーにサイトを設置してきましたが、選べるならとりあえずエックスサーバー選んどけばまず問題は無いな、と思わせる、そういう存在感のサーバーです。
今では「プライベート利用でも月額1,000円はギリ視野に入るかな……」と思っている私ですが、Web制作を趣味でやっていた頃は、有料サーバーなんて何がいいのか全くわからない、というくらいのものでした。
青春時代の真ん中において、私の主戦場は広告付きの無料サーバーだったのです。
とかです。
特に無料サーバーの選択肢が乏しかった時代において、無料でCGI(ただしPerlのみ)を使えたiswebと、シュッとしたドメインが多く当時下部にテキスト広告が出るだけだった忍者ホームページは爆発的に流行していた記憶があります。
今でも無料サーバーは趣味サイトを中心に使われて続けていて、いろんな意味で当時の想いを引き継いでくれる、そんなありがたい存在だと思っています。
広告を表示するだけでビジネスモデルとして成り立つものなのか? とプロ(仕事でやってるという意味で)のWeb制作者側になって初めて心配しているのですが、まあ存続しているということはおおよそ黒字か、無視できる程度の赤字なんでしょうね。最近の言葉ではフリーミアムとか言って、95%無料ユーザーでも、5%が有料ユーザーなら黒字にできるのでそこを目指せ、ということのようですが、5%は有料プランを使ってるのかなぁ。今現在の私にとって、無料サービスは「お金がないので助かるサービス」というよりも、「面倒でセキュリティ的にもアレな支払い処理がないので便利なサービス」というくらいの意識なんですが、もしかしたら昔私のように無料サーバーにお世話になっていた人が社会人になってお金を稼ぐようになって、URLを維持したいからという意図もありつつ、一種の恩返し的マインドも抱きつつ無料サーバーの有料オプションを利用してる、というような心温まる「5%」もあるのかもしれない。
(それって心温まる要素あるか?)(あるようなないような)